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読んだ本『手話の世界へ』オリバー・サックス著3

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最後の章では、アメリカの聾学校ギャローデッド大学における、ろう者の学生運動を取り上げ、ろう者のアイデンティティについて書かれています。

ギャローデッド大学は、聾学校だったものの、設立から6代目の学長までろう者の学長はいませんでした。
6代目の学長が辞任する際に学生たちは、次の学長はろう者からという期待にあふれていました。
候補者にろう者はいたものの結局、学長は聴者が選ばれ、選出した理事長からは「ろう者はまだ聴者の世界で役割を果たすことが出来ていない」との理由を説明したため、学生からの不満が爆発し学生運動が巻き起こりました。

この運動により7代目の聴者の学長は数日で辞任し、8代目には、ろう者の学長が初めて就任しました。

これまでのろう者の教育方針は、口話法であれ手話を使った教育であれ聴者が考え決定してきたものでした。
この学生運動は、ろう者が考え行動を起こし意識革命が起きた瞬間だったのです。

これまで、ろう者は教育のために手話を禁止されるようなことが多くありました。
しかし手話は、ろう文化を形成する礎となるものです、全世界が共通の言語なら便利になるかもしれませんが、
それぞれの国の言葉が文化やアイデンティティを築いているように、手話が築く世界があります。
それは他人が簡単に奪って良いものでは無いのです。

☆☆☆☆☆

オリバー・サックス著『手話の世界へ』は色々な視点から手話に触れていてとても勉強になりました。
著者自身が現地へおもむき生の空気感を伝えてくれている場面や、
私が紹介した以外にも様々な事例を紹介するなど、堅苦しくなく興味深い話を解説しています。
手話を通して言語についても考えるきっかけにもなりました。

古い本なので、もしかしたら科学的な情報などはもっと進んでいるかもしれませんし、歴史については本書が出た約20年前とは状況も違うと思いますが、この20年でどう変わったかを知るきっかけにもなるのかなと思います。

興味がある方は是非読んでみてください。
ちなみに私は図書館で借りてきました。



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